暖色のアパート

 

 

きゅうに会えなくなるのです

わたしが しろくろ くろしろ しろ 指遊びしてるあいだに

彼は かさをさして 階段 とおくのほう

 

おかしいなあ 白い水溜り

わたしのアパートには 瓶にガーベラ 虹の絵

くりぬいたカーテンから 長方形のひかり

むらさきいろの冷ぞうこ いいにおいのシャンプー おふとん

なんでもあったのに

 

おいしくない珈琲を飲みたくなるのです

彼のシャツは うすみどりと青緑のしま

彼のかさは 濃紺に白のみずたま

さいごに話したことは ぬけおちた記憶について

 

とりかえしのつかないことに わたしはうとくて

ああ なんか 泣かなくなったな

おはちに入った スープをすすりながら

1人が好きなんだろうな っておもったんだ

 

あの電車 乾いた道 カレンダーのなかの引出し

オクターブの打鍵で 呼んでくれる声をかき消してたみたい

わるい癖 いじわるで きまぐれで

ふぇるまーた 延ばしきるまで あなたを追いかけられなかった

 

 

今はね グラデーションの空から

あおいキラキラが降っていて

苦い珈琲には牛乳を入れて

あさがおが咲くのを待ってるんだ