ざあざあ

 

 

 

とんでゆきたくとも わたしは小鳩じゃないのです

あかいめをしていても うさぎじゃないのです

こおらのなかにとじこもっても かたつむりじゃないのだと

あめふりのなかで おもっておりました

ざあ ざあ ざあ ざあ

あめふりのなかで。

 

あなたにあうために うまれてきたのではないと

だれかが けむりのむこうで つぶやいた

わたしは ふりむかない あのひとが すきでした

みどりいろの かさで ひとなみに きえてゆく

あの せなかが すきでした

 

ざあ ざあ ざあ ざあ

よくふるものだねと

コーヒーをのみながら ダイヤのゆびのわをちらつかす

このひとのこえは すこし きどっていて

さそりざの わたしは すこし しらんふりしました

 

あたまに「お」のつく花は

おしろいばなで おじぎそうで

こんなひも いぬのさんぽをかかせないひともいて

たかが恋なんて といううたが ながれてきました

ざあ ざあ ざあ ざあ

わたしがうまれたあさも きっと

あめだったろうと おもうのです。